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深堀り!海外絵本の世界 ① エドワード・ゴーリー特集

~ようこそ、めくるめくナンセンスの迷宮へ~
異色の絵本作家 エドワード・ゴーリー

Image courtesy of the Edward Gorey House, Yarmouth Port

Edward Gorey(1925-2000)

謎めいた異色の絵本作家

風吹きすさぶ冬の夜、古めかしいお屋敷に突然現れた奇妙な訪問者。長いマフラーに足元はコンバースのハイカットらしきスニーカー。「お客」は、壁に鼻を押し当て、皿を食べ、大切なものを隠すなどの奇行を繰り広げ……『The Doubtful Guest』(うろんな客)

Aはエイミー、階段から落ちた。Bはベイジル、クマに襲われた――名前のアルファベット順に次々と不幸に見舞われる子どもたち。ゴスかわいい絵、シュールな内容、韻を踏んだテキストが渾然一体となって読者を当惑と不安の極みに突き落とす、恐ろしいABC本 (『The gashlycrumb Tinies』(ギャシュリーグラムの子どもたち))


不可思議なキャラクター。
陰鬱だけれど優美なペン画。
奇妙な物語。


絵本の概念を広げたエドワード・ゴーリーの作品はどれも強烈な読後感を残し、世界でカルト的人気を博しています。その作風はゴーリーにしか生み出せないものであり、熱狂的なファンやコレクターがいることでも有名です。
どういう意味? どうしてこうなった? なんだか怖いけれど面白い……謎だらけの作品同様、ゴーリーその人自身も謎めいた人物です。
その歩みをたどると、少年時代から創作意欲にあふれ、実に多彩な文化と芸術的刺激に満ちた青年期を送り、戦後、経済・文化・芸術の中心地として活況をきたすニューヨークでその才能を開花させたことがわかります。

早熟だった幼少期と旺盛な創作欲

ヴィクトリア朝時代の英国風の世界観で知られるエドワード・ゴーリーですが、実はアメリカ出身。1925年、シカゴに生まれ、2000年に亡くなるまでほとんどアメリカを出ることのない生活を送りました。
幼少期は『ドラキュラ』を読むなど早熟な子どもで、何度か飛び級の後、フランシス・W・パーカー ・スクールに進学。(ここはアメリカを代表する哲学者ジョン・デューイとフランシス・W・パーカーが設立した進歩的な教育哲学を実践する学校で、クラスメイトには後に抽象画家として名をはせるジョアン・ミッチェルもいました)。
少年ゴーリーは美術教師から刺激を受け、また、演劇の衣装や舞台のデザイン、卒業アルバムのデザイン監修をするなど創作活動に熱中する学生時代を送ります。
卒業後はシカゴ・アート・インスティチュートに半年通うも、第二次世界大戦で兵役に従事。終戦までの2年間を、毒ガスなど兵器開発がおこなわれたことで有名なダグウェイ実験場にて書記官として過ごします。
その後、1946年に兵役を終え、ハーバード大学に進学。後に詩人としてNYの芸術シーンを駆け抜けるフランク・オハラとルームメイトになり、詩集の出版や舞台デザインなど創作活動に没頭。卒業後、メリル・ムーアの詩集の挿絵で初の商業出版を果たします。

作家はツライ!創作活動の苦悶をユーモラスかつエレガントに描いたデビュー作

エドワード・ゴーリー

卒業して数年後、ニューヨークに引っ越したゴーリーは出版社・ ダブルディ社にブックデザイナーとして就職。 画期的なシリーズとなるアンカーブックスで、大胆で斬新な装丁やタイポグラフィーをデザイン(このシリーズにはウェルズ『宇宙戦争』など、ゴーリーによる秀逸なデザインが多々あります)。
そして1953年、デビュー作となる”The Unstrung Harp”(『弦のないハープ またはイアブラス氏小説を書くを出版しました。
毎年決まった日に小説を書き始める高名な作家、イアブラス氏。ところが、寝ても覚めても作品について思い悩み、苦しみは日ごと増すばかり。ときに登場人物の幻影を見、自分の原稿を読み返しては才能に絶望する……。
作家のデビュー作にはその作家のエッセンスが凝縮されていると言われますが、 緻密で美しいペン画と慇懃かつウィットに富んだテキストにゴーリーの魅力が詰まった作品です。作品で主人公が着こなしているスモーキングジャケットやインバネスコートなどは、オスカー・ワイルドが着用していたものに似ているそうで、ファッションにも確固たる美学を感じさせます。

多才な芸術家として

NY時代には一世を風靡したコリオグラファー、バランシンが立ち上げたバレエ団に遇し、以降熱狂的なファンに。一方、舞台芸術でも活躍したゴーリーは、舞台劇『ドラキュラ』でトニー賞(衣装デザイン賞)受賞。この舞台にはグラナダ版シャーロック・ホームズとして日本でも一世を風靡した英国俳優、ジェレミー・ブレットもドラキュラとして登場しています。版画制作やテレビ番組用のアニメ制作など幅広く手掛け、精力的に創作活動を続けました。
ゴーリーの私生活は謎に包まれていたそうですが、芸術家らしい逸話も残されています。学生時代は部屋に墓石を運び込みテーブル代わりに。NY時代は鮮やかな色に染めた毛皮のコートにスニーカー、指には山ほどの指輪といったド派手ファッションでバレエ観劇へ。引っ越し時には、所有していたミイラの頭を戸棚に忘れてしまい、警察から電話で問い合わせが……。
大変な読書家で、特にアガサ・クリスティー、ジェーン・オースティン、ベケット、ラテン・アメリカの幻想小説の旗手ボルヘスや源氏物語などを愛読。愛猫家のゴーリーは飼っていた猫に源氏物語からとった秘密の名前をつけていたとか。
精巧で緻密なペン画と謎めいたテキストで、救いのない不条理劇やナンセンス物語といった独自の世界を紡ぎだしてきた稀代のアーティスト、エドワード・ゴーリー。 未翻訳本も多々存在しています。不可思議で迷宮のようなゴーリーワールドをぜひ一度のぞいてみてください。

直営店にて直輸入グッズ・書籍を拡充!

エドワードゴーリーグッズ

エドワード・ゴーリーのコーナーが充実


直営店ではアメリカの Edward Gorey Houseなどから直輸入した雑貨・書籍を長年お取り扱いしております。
さまざまなゴーリーグッズに加え、数々の未訳本や、ゴーリーの邸宅エレファント・ハウスの写真集など、 ゴーリーファンの方、初めてゴーリーの世界に触れる方にも広く楽しんでいただける充実のコーナーとなっています。ぜひ、ご来店ください。

ご興味、ご不明点等ございましたら、お気軽にご連絡くださいませ。掲載商品以外にも、取扱い商品がございます。お探しの商品などございましたら、ぜひご用命ください。

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